2015年1月21日水曜日

マジックの趣味としての楽しみ方⑥(クリエーター)

今回はいかにもマジックらしい、と思われます。
⑤新たなマジックのネタやトリックを考えだしたい
について書いて行きます。

最初に手品・奇術・マジックに触れた時には、ただただ不思議で唖然とするだけの状態となります。普通の人は時が経つと手品のことなど忘れ去り、何事もなく日常の生活に戻ります。一部粘着気質の方はこれにに嵌って、最初のうちは種・仕掛けに関する情報を漁る状態となります。

大抵は、ネットの無料情報を漁ったり、市販の本や道具、DVDを買って、満足する、(あるいはお金がないので妥協する)のですが、それに飽きたらず、職人的気質のある方や、マジック道具作成の世界で名を上げようとする野望をお持ちの方、あるいはプロ級を目指す方などは、既存製品に見切りをつけ、各種マジックを開発していくことになります。

その中にもタイプがいろいろいます。
(1)全くゼロベースで新ネタを作りだそうというクリエイター気質の方
マジックの知識の少なめの方に多いです。私程度の素人でさえ、相当数のマジックのネタに関する情報に触れることができてしまい、新たに開発されてくる商品の動画や商品紹介ページをネット通販サイトで見ても、何となく仕掛けの想像がついてしまいます。それくらい、斬新な現象を開発するのは難しく、大抵、新技術とか言っていても、過去の作品の影響を受けています。特に、マジックの種のデータベースが技術論文や特許のように整理されているわけではなく、過去にどんな作品があったのかを体系的に検索しようとしても容易でないことが、前例調査を難しくしています。
しかし、ゼロベースで新ネタを作るのはこういうクリエイターにとっては憧れであり、挑戦している人はいっぱいいますが、大抵、駄作の屍を築いております。
この中で、ゼロベースというのに近いのがDr.Sawaの作品です。真珠物語などのようなクロースアップマジックであんな感じの情緒的作品を作り上げたのは奇跡的です。
また、故人ですが、オランダのトミー・ワンダーが客からかりた時計をあらかじめ机に置いていた箱から手を一切触れずに入れてしまう、『ネスト・オブ・ボックス』のギミックなどは説明を見ても、全くゼロベースと言ってもいいところから完成させています。(Tommy Wonder & Stephen Minch"The Books of Wonder"(1996)p.267-318Hermetic Press, inc

(2)既存作品を複数組み合わせて新ネタを作る
こちらは比較的成功しやすいパターンです。現在でも画期的、と言われるネタはこの既存作品の組み合わせとなる場合が多そうです。
あまり具体的例は挙げられないのですが、佐藤総氏のブッシュファイアトライアンフと呼ばれる、乱雑にばらまいたカードを集めると、お客の選んだ1枚だけが表向けになっているというマジックがあります。これについても現象論的には、ご本人の著作にもあるとおりハートリングやキムラットらにより、混ざった状況を示す方法が既に存在しております(参考文献:佐藤総『Card Magic Designs』(2008)p.114 フィールズマジックエンターテイメント)
しかし、混ざった方法論は前者が本当に混ぜてしまうのに対し、佐藤氏の方法は本当には混ぜておりませんので、新ネタとして成り立っています。
こういった成功例もありますが、大抵は原作の劣化版となってしまっております。ただ、そういう外野の批判を気にせず、色々試すことは重要だと思います。

(3)既存の作品を自分流にアレンジする
これは割とマジックを自分で演じる方なら普通に行っております。
当然、人により体型やキャラクター、演じるシチュエーションも異なりますので、原作そのままでは合わないことになったりします。
最近で有名になったもので、代表的な作品としては、KiLaの『バーテンダーの136(イサム)』として演じられているストーリー仕立てのカードマジックがあります。演技動画はYoutubeにもあげられたりしておりますが、正式に閲覧しようと思うと、(KiLa『人はなぜ騙されたいのか』(2014)扶桑社)の付属DVDで見ることが出来ます。この作品の前に色々なマジックを他に行い、伏線を張ったあとに、トリとして行われております。そういう意味ではKiLaオリジナルとなっております。もちろん、これの基となった作品は存在しており、(Bill Malone"Sam the Bellhop"日本語版(2007)スクリプトマヌーヴァ)のDVDにて、ほぼ同様のプロットが説明されております。
それでも、元々英語版の作品を日本語に合うように直して、ルーチンのトリに使えるようにしたという点では新たにマジックを考える、という人たちの参考になると思います。

結論めいたものは特にありませんが、自分にあったようにマジックを好きに作っていきましょう、駄作を生み出そうが、他人の評価を気にせず続けていけば、上手くいくこともあるかもしれません。 気長にやって下さい。

0 件のコメント:

コメントを投稿