2020年5月22日金曜日

アフターコロナの(マジック、ホビー等)業界の生き延び方

長らくブログ記事更新していませんでしたが、マジック自体を辞めたわけではございません。自宅待機等の機会も増え、色々考えることも多かったので、久しぶりに文章を書くことにしました。

新型コロナウィルス(COVID-19)感染症対策で緊急事態宣言まで発令されていましたが、大阪府、京都府、兵庫県については解除される見込みとなりました。

本感染症対策により予定されていたマジックショーの依頼もすべてキャンセルとなりました。アマチュアでさえこの状況なので、プロマジシャンだと営業活動への影響大でしょう。

エンタテイメント業界の場合、多数の観客を集め、一か所でパフォーマンスを行うことにより、パフォーマンス及びその不随品(パンフレット、グッズ、CD販売等)を収入源とし、効率的な集金を行うシステムで成り立っていました。しかし、今回、新型コロナウィルスのような未知の感染症に対しては現状も感染拡大は抑制されているとはいえ、根本的なワクチン開発が完成しているわけではないので、多数の観客に対するライブパフォーマンスに対する自粛傾向にあるのは確かでしょう。

現在、各種エンタテイメントや趣味の世界も、新型コロナウィルスのみではなく、その他外的要因を受けて、その活動を過去の伝統から変化させて対応せざるを得ない状況となっております。そういった時代の変化も踏まえて、今後のエンタメ業界をどのように延命させていく必要があるかを述べていきたいと思います。

基本的には次の3つに集約されるでしょう。


①ライブ以外の媒体を用いたパフォーマンス活動

②あらゆる想定されるリスクに対応したパフォーマンスの維持

③プロのセミプロ・パートタイムプロ化、アマチュア化


①については従来の巨大利権を伴ったマスメディアであるテレビ、ラジオ、新聞から、現在はWeb上で閲覧できるYoutube、TikTok、InstagramやTwitter等のSNSを用いてパフォーマンス内容を個人で周知することができるように変貌を遂げております。

人々の生活水準が上がるにつれ、マスメディアのお膳立てした人気のあるように見せかけることのできるマス・エンタテイメントに対し違和感を持つ人も増え、個々人の選択肢が多いように見えるWeb上メディアを利用した少数派パフォーマンスについても抵抗なく受け入れられるようになりました。おそらく、マスからミニマムへの多様化の流れを止めるのは難しく、マスメディアもWeb上の世界へ生き残りを賭けて転身することになるでしょう。今はある意味メディアの過渡期です。そうなると、いずれWeb上メディアも既存マスメディアとは異なる形になる可能性は高いですが、何らかのマスメディアが登場し、覇権を握ることになるでしょう。ライブパフォーマンスとWeb上メディアでのパフォーマンスは求められるものが違うので、今後は比較的短期間で自己完結するような、インパクトのあるパフォーマンスが持て囃され、長時間かかる、情緒豊かなパフォーマンスは好まれなくなるでしょう。

囲碁や将棋等のプロが対局して稼ぐ分野の場合、実際の対局が対面となるため、対局自粛となっていました。そのため遠隔対局によるネット配信ということが可能で、実際試験的に非公式の公開対局が行われたりもしました。

アイドルたちも動画配信で投げ銭を受け取るシステムに力を入れたり、テレビタレント達もYoutuberとしての活動を始めたりしています。

マジックに当てはめると、大舞台や大道具を準備し、大人数で作り上げるようなパフォーマンスは時代にそぐわなくなり、特殊ギミックやブラックアートウェルを駆使した、インパクトのある演目が好まれるでしょう。マニプレーション系は練習に時間がかかる割にインパクトが薄く、間違いなく廃れます。もしマニピュレーションが生き残るとしたら、ジャグリング的難易度がわかるようになり、簡単にはできない内容なのだ、ということが認識されたうえで、マニア的技術習得の需要が喚起されたとき位でしょう。要するにマニピュレーションが動画サイトの『歌ってみた』『踊ってみた』と同様に『四つ玉してみた』とか『ミリオンカードしてみた』レベルの認知度になれば可能です。ただ、これが今までプロ活動していた人が望んでいたパフォーマンスとは思えませんが。

②については、接触を防ぐという現状の新型コロナウィルス対策を求められると、既存のシステムでライブパフォーマンスを行うことが困難です。実際に劇場では400人入る所も間隔を開けて座ると60席で満員、とかいう記事もあったりします。

感染症対応としては室内密閉空間でのパフォーマンスに制約が続くと想定されるので、屋外、あるいは巨大ディスプレーを通したパフォーマンスについても対応する必要があります。

マジックの場合、特にインドアの無風状態、角度制約が割と強い現象の演目が多いため、屋外、突発的な状況ですぐパフォーマンスできる演目を確保することが重要になるでしょう。また、夏場でも薄着で対応できるような、機動力を生かし、お客に直接道具を触ってもらったり手伝ってもらったりする必要のない、身一つで時間を持たせることのできるパフォーマーでなければ生き延びることは難しくなっています。

そういう意味では、マジックだけの分野でなく、他分野にも専門領域を持つマジシャンが主流になるでしょう。女性マジシャン達では元々、歌やダンス、司会者、演劇等の他分野から移ってきた人も多いので、アフターコロナ後でもしぶとく頑張っていたら、パフォーマンスで生き延びることが出来る可能性は高いと個人的に思います。

この他のリスクとしては、マジックで表現できて不思議がられていた物が技術の発達によって常識となり、もはやマジックで無くなってしまう、ということも考えられます。電子デバイスの発展もあり、テレパシー現象の類など、どこかで電波受信できるよね、とか思われると成り立たなくなります。これに対抗するには技術重視のマジックをメインとし、技術を楽しむ分野を開拓するという方向が考えられます。これは最早ジャグリングと競争することになることを意味しますが、使っているものが小さくて地味な場合が多いマジックでは、トランプを使ったジャグリングもどきやコインを使ったジャグリングもどきになってしまい、覇権を握るのは難しそうです。

③については、②でも言及した通り、最早一つの分野単独で生き延びるのは難しいため、金を稼ぐ本業(あるいは世を忍ぶ仮の姿)として、従来からあるサラリーマンや投資家として生活の糧を得ながら、本来やりたいパフォーマンスを行うという、プロからセミプロへとカテゴリー替えを行う方法です。

マジシャンでは割と普通に本業持って週末や祝日にマジック活動を行っている人、学生でプロ活動している人はいますし、マジックでは食えず廃業してしまう人も普通にいます。

アイドルなどは最初から長期間活動できるものと思わず、大学進学して一般就職したり、比較的長く活動できる女優や声優への転身を図ったりしています。

他の分野では、囲碁でもタイトル獲得経験のあった坂井八段が、昔に取得した医師免許を元に医師へ40代後半で転出したり、タイトル挑戦経験多数の一力八段が親の経営する新聞社に入社したり、という、昔からは考えにくい決断をする人も出てきております。将棋でもプロ入りしたばかりの谷合四段は東大博士課程に在籍中で情報工学関係の書籍を発行したり、星野四段のように企業に就職する人、女流の竹俣元初段のように早稲田大を卒業しアナウンサーへ転身し、将棋に見切りをつけてしまった人もいます。

囲碁や将棋の場合、AIの発展により既にトッププロが石を2つ置いたり、飛車を落としてもらっても簡単に勝てないレベルまで強くなってしまい、存在意義に自信が持てなくなってきている点もあるのかもしれません。


おそらく今専業のマジシャン達もリスクの高さから、専業から兼業へと切り替えることを検討している人も多数いると思います。人生80年以上あるこの時代、重大な景気悪化要因となるイベントは10年に1回位は普通に発生しており、おそらく景気も数年したら何事もなかったかのように戻ると楽観的に考えていますが、悪化も普通に起こると思っています。なので、一つの仕事や芸で生き延びていくのも恰好いいですが、生き延びるためにもがき苦しみ、やむを得ず複数分野を転々とする能力も時代の変化に対応するためには必要ではないでしょうか。

結論じみたものはありませんが、個人的には、人間万事塞翁が馬で、良いこと悪いこと、想像を超える技術革新や天変地異、社会要請の変化は常に起こり得るので、飛び抜けた才能でトップになれるという自信のある人以外の凡人は③のアマチュア化して、エンタメ、ホビーを楽しむのが良いと思います。