2015年2月20日金曜日

マジックの始め方(クロースアップ)②カードの道具

前回に引き続き、クロースアップ編②として、少しでも使用する素材に興味を持っていただくため、カード・トランプに関する薀蓄をお届けします。
実のことを言うと、この辺りの内容はクロースアップでカードマジックをするのに直接関係のない雑学です。よって、手っ取り早く基礎知識を習いたいという人にはほとんど不要ですので、さらりと読み流してください。

まず、マジックに使われるカードそのものはどんな模様やタイプがあるか、実例を挙げてお見せします。

現在標準的に用いられているBicycleのカードは、『STANDARD』と書かれた、写真1、2のような箱に入っています。箱の裏模様は従来の物と異なり、広告のような模様が描かれています。
写真1.Bicycle Standard箱の表側


写真2. Bicycle Standard箱の裏側

そして、Bicycle Standardの底面には、写真3の通り、製造年と製造工場(この場合、2009年製で、KY:ケンタッキー工場)が記載されています。U.S.Playing社の番号では808と従来のBicycleの番号が継承されています。
写真3.Bicycle Standard箱の底面


写真1~3が何を意味しているのかを理解するために、旧Bicycle Rider Bacのデザインを説明します。
Bicycle Standardが製造開始される前まで使われていた、100年以上歴史のある模様です。 箱の裏側の模様が中のトランプの裏模様と同じとなっており、これを利用したマジックも多数存在しています。このため、Bicycle Standardになってから、出来なくなった名作が相当数あります。
写真4.旧Bicycle Rider Back箱の表側


写真5.旧Bicycle Rider Back箱の裏側

ただし、旧Bicycle Rider Backデザインの箱でも一部底面の表示が写真6.のように『807-R-TG』という番号の物が存在します。大抵、トリックデックとかギャフデックとか呼ばれる手品に使われる特殊製品で見かける番号ですが、普通のデック(デックとは一組のトランプのこと)も存在します。
『807-R-TG』が何を意味するのか調べたのですが、『あすぱら』カード別使用感 BICYCLE807の記事に言及されています。どうも、マジシャン用に後ほど述べるMandlin Backデザインの物を作ったが、それでも旧Bicycle Rider Backデザインの箱の要望が強く、識別番号807とした、同じデザインのものを復活させたようです。2015年2月現在のU.S.Playing Cardの公式サイトにはBicycle@807 deckとしてラインナップにあります。
正直言えば、そうやって復活させるよりは、Bicycle Standardを廃止して、元の旧Bicycle Rider Backを808に戻せば、デザインの統一が図れ、生産量も増やせ、商品管理も楽になると思うのですが、アメリカ人の考えることは私にはよくわかりません。

現在流通しているのはU.S.Playing 社のケンタッキー工場製のものとなっていますが、オハイオ製のカードの方がマジシャンにとって都合のいい仕上がりのカードとなっているので、オハイオ製は 人気があります。旧バイシクルの箱でもケンタッキー製の物が存在しております。区別方法としては、旧バイシクルの箱でも黒いシールの物はケンタッキー製で ある可能性が高いです。また、ケンタッキー製の物の方がフィルム外装がぴったりくっついた感じで、オハイオ製はフィルムと箱に隙間がある感じになっている という情報もあります。





写真6.旧Bicycle Rider Backデザインの箱『807-R-TG』

旧デザインのBicycleの生産が中止され、旧デザインのBicycle箱を惜しむ人々(たいてい、マジック愛好家)からの要望により、マジシャン用にカードの裁断や旧Bicycleデザインに似せたカード『Mandlin Back』と呼ばれる物が製作されました(写真7~9)。Rider Backが自転車に乗った天使のデザインなのに対し、Mandlin Backは良く見ると、マンドリンを持った天使のデザインとなっております。パッと見はRider Backとそっくりで、ほとんど、Rider Backと見分けのつかないデザインのため、あまり違和感なく、マジックに使えると思います。
写真8.の箱の底面を見てわかる通り、ここは、Bicycle Standardと同様に製造年と製造工場(この場合、2010年製で、KY:ケンタッキー工場)が記載されています。U.S.Playing社の番号では809という番号が割り付けられています。
このようにマジシャン向けにデザインされたのですが、現在は流通が極端に減っているようで、取り扱っていないマジックショップも多いです。 


 写真7.Mandlin Backの箱表側。ほぼRider Backのデザインを踏襲。


写真8.Mandlin Backの箱裏側。ほぼRider Backのデザインを踏襲。


写真9.Mandlin Back箱の底面。番号は809となっています。


カードマジックをたくさん練習すると、当然紙製トランプですので、消耗してきて、側面が黒くなったり、表面に黒いツブツブがついてきて滑りが悪くなります。カードフラリッシュや難関技法、カードを曲げて飛ばしたりするようなことをする人は消耗が激しいため、大量にカードを購入することになります。
よくある購入単位としては、鉛筆とかと同じく、ダース(12個入り)があります(写真10、11)
Bicycle Standardの物は箱の形が異なっております。そして、通常は赤6個、青6個入りとなっていますが、ショップによっては、赤12個とか青12個とかのダースも購入できます。
安価に購入する方法としては、Yahooオークションをよく見ていれば、格安で購入できるところが必ずあります。
通常店舗で購入する場合、コストコがあれば、会員になる必要はありますが、格安で購入することができます。会員でなければ、知り合いの会員に連れて行ってもらうとか、買ってきてもらうとかすれば購入できます。
そこまでマニアでなければ、1ダースあれば相当カードマジックが練習できます。しかし、さらに極めたい、とか、テーブルホッピングと呼ばれる、前田知洋スタイルで、テーブルごとに新しいデックを使いたい、という方の場合、ダースでは物足りず、グロスという単位で購入することになります。1グロスは12ダースで、144個入りとなります。
個人輸入する手もありますが、重さが重く、船便になるため、到着までに時間がかかり、相当大量に購入しない限りは、代理店やコストコなどで購入した方がBicycleの方は安くなると思います。
写真10.旧Bicycle Rider Backダース箱


写真11.オハイオ製旧Bicycle Rider Back内容(今回の物は赤12デック入り)

ということで、Rider Backのデザインのものをメインに紹介してきましたが、次回は、もう少し特殊なデザインのカードについて、ほんの少し述べたいと思います。

2 件のコメント:

  1. 色々意見がありますが、品質は変わってないです。
    パッケージは確かに宣伝のとか思わしくないですけどね。
    2013年の完全移行した工場のでもジョーカーモノクロかあるし。
    そして、オハイオでも時代で酷いものがありましまた。
    噂が、かなりはばかっているのでしょう。
    某、輸入元では寧ろ品質はUPしているし、劣ってないと言います。

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  2. 匿名様
    コメントありがとうございます。
    古いデックも持っていますが、昔と比べて腰が違う(ちょっと柔らかくなった感じ)のと、裁断に差があるような感じはします。使用する機械がかつての物から更新されてしまっているので、作りに何らかの差が生じるのはやむを得ないと思います。
    印刷面については確かにライダーバックの白ふちのずれが見にくい物とか裏の青い色が年代によって異なるとか、古いバイシクルでもひどい物は普通に存在していますね。
    また、反りは今のカードの方が少ないような気がします。
    エンボスも昔の方が出来が悪かったせいなのか、今のカードほど最初でも滑りません。今のバイシクルだと新品では机に置いていたら勝手に滑り出すくらい滑らかですが、マジック的には使いにくいです。
    多分、今の方が個体差が少なく、標準化されている、という工業的意味では品質的に安定しており、品質UPしているのだと思います。
    だから品質は向上していても、昔のカードの方が使いやすい、ということはあり得ると思いますけどね。それは品質の問題ではなく、カードの作りの成せる偶然だとは思いますが。

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