2015年2月1日日曜日

マジックの趣味としての楽しみ方⑭(練習の鬼)

⑬高度な技法を一人で練習するのが好き

一般の方が手品・マジックを趣味にしているというと、まず思うことは、「手先器用なんですね」ということです。それだけ、マジックに対して、理解がなされていないことを意味します。
当然のことながら、手品・マジックにも種類が色々ありますので、数理的に勝手に現象が起こるものや、道具が全てやってくれるマジックも存在し、このような演目ではもはや手先の器用さなど関係なく、トーク力やダンス、演劇的素養が必要とされます。
これに対し、スライハンドやマニピュレーションと呼ばれる分野や、クロースアップマジックの分野にはとてつもなく手先の器用さ、というより、ひたすら反復練習しなければ現象を起こすことすらできないマジックや技法が存在しまします。これらは、練習して上達する過程が結構一人悦に入り、楽しかったりします。

例を挙げますと、ステージ、サロンマジックで、ミリオンカードと呼ばれる、空の手からトランプを大量に取り出すマジックがあります。1枚出すだけなら比較的簡単なのですが、これを綺麗に扇型に広げて次々と取り出すためには、指が痛くなるくらい数か月練習してやっと形になり、人前でそれなりのクオリティーで見せるためにはさらに数年必要とかになったりします。
また、四つ玉というビリヤードボールを指の間に出現させるマジックも学生などが良く演じておりますが、非常に角度に弱いため、技術的な練習を行うとともに、見えないようにするための研究なども必要で、非常に長期間の練習が必要です。しかも、滑りやすいため、練習ではパーフェクトだと思っても、本番では汗で滑って失敗するリスクも高く、四つ玉を演じている人は練習の鬼といっても良い人が多いです。

クロースアップマジックの分野でも、カードを使ったマジックの場合、フラリッシュという、大道芸的にシャッフルしたり、カットしたり(ようするに混ぜること)を格好よくする方法があります。これなどは練習しているかしていないかで綺麗さに差が出ますので、技法を一人で練習する人にとっては、恰好の練習材料となります。
また、マジックに使う技法としては、ネットを見てもわかるように、パスと呼ばれる、ひそかにカードを入れ替える(わざとぼやかした表現としています)技法があります。種類も色々あり、練習すればするほど素早く動作ができるようになるため、カード技法の上手さを評価するのには良い教材なので、マニアの方は練習しまくっています。普通のトランプの重さではスピードアップが図れないので、さらに重い鉄板をトランプ形状に切った板で負荷をかけて普段練習している方も大勢おられます。
カード以外でもマッスルパスという、手の平からもう一方の手へ、動かさずにコインを飛ばしてしまうという技法があります。これなども、30㎝下から上に飛ばしたとか、練習していくにつれ、手の平も堅くなり飛距離が伸びるます。これは比較的若い年齢層(小中高生)などにとって格好いいと映るようで、 そういった方たちやマニアの方々が熱心に練習されております。マッスルパスの飛距離を競う大会まで存在しており、高度な技法を極めたい人のためにはうってつけです。
こうなると、もはや人を楽しませるとかそんなことはどうでも良くなります。

ウィザード・インと呼ばれる団体には、こういった技法重視をしたマジシャンが多く所属しております。この団体は渋谷系と呼ばれ、月刊少年ガンガンに『マジック・マスター』という漫画を連載したり、ウィザードインデックという子供をターゲットにした滑りの悪いトランプを売り出したりしており、小中学生などに影響を与えていたようです。
TVで有名技法、有名マジックを種明かししてしまった関係で、マジシャン関係者から色々苦情を言われていた団体ではありますが、基本的にはギミックを使わずに、普通の道具で全てやってしまえ、という雰囲気のマジックを見せてしまいます。そのためピュアリスト向きの、世間一般の人が器用なマジシャン、と思っているのに近いスタイルが好きな人はこの団体の書籍や会に参加すればいいでしょう。色々な評判はありますが、私は何が正しいのか答える判断材料を持っておりません。ということネット上で情報検索するなり、人に聞くなりして、自己判断の上、参加するなりなんなりしてください。私は何があっても責任は取りません。
ただ、ウィザード・イン関係の緒川集人がステージでもクロースアップでもすごいテクニックの持ち主であることは間違いないです。練習大好きの人には高い山のような存在でしょう。しかし、日本では全く受けず、アメリカでは受けが良いようです。プロの方に関してその理由を書くのはおこがましいですが、TVや動画で見たところ、日本での受けが悪いのは、①喋りが早口すぎ、②テクニックがあるのは良くわかるが、逆に嫌味に感じられてしまう、のせいではないかと思われます。いや、確かにすごいのですが、自分でアピールしなくてもいいんではないか、と思います。
アメリカで受けている理由は①喋りが英語のため、日本語に比較してどうしてもゆっくり目になる。よって、英語だと、比較的ちょうど良いスピードになっているのではないでしょうか。②しゃべている英語がノンネイティブのため、ネイティブ的にはコメディータッチのように聞こえる【例えて言えば、ゼンジー北京が『私、中国は広島の出身あるよ』のような訛りのある感じに聞こえるのに、凄腕のマジックをしているギャップが面白いのではないでしょうか。マギー司郎がミリオンカードをドヤ顔して真剣に演じている感じ、と言えば分かるでしょう】。
日本では謙虚さが求められるが、アメリカでは自己アピールを積極的に要求されるという、文化の差が人気の差にもあるのではと個人的に思います。


ちょっと脱線しましたが、結論として、 ステージでもクロースアップでも高度な技法は存在するので、一人で十分楽しんでも楽しいです。ただし、他人が見て楽しいのかどうかは全く相関がありません。
技法関係の達人の多い団体にはウィザード・インがありますが、ご加入は自己判断で決めて下さい。

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