2015年2月17日火曜日

マジックの始め方(クロースアップ)①カードの道具

①比較的使用する道具が安価である。
と導入編で書きましたが、まず、クロースアップマジックで使う道具について述べます。
(1)カード(トランプ)
(2)コイン
(3)輪ゴム
(4)スポンジ
(5)ポケットリング
(6)その他

と適当に挙げてみました。正直言うとクロースアップマジックに用いる道具は色々考えられますが、収拾つかなくなるので、これくらいにしておきます。比較的バリエーションの多いものを挙げてみました。
まず(1)カードはいわゆるトランプです。使うカードは手品の場合、普通、アメリカのU.S.Playing社の紙製のBicycle RiderBackと呼ばれる模様の物が良く用いられます【以降このカードをBicycleと呼びます】。
Bicycleにはポーカーサイズとブリッジサイズというものが存在します。今、手持ちのカードを測定してみると、ポーカーサイズは縦88㎜、横63㎜で、ブリッジサイズは縦89㎜、横57.5㎜とポーカーサイズの方が5㎜程横長で、ブリッジサイズの方が1㎜程縦長となっています(写真1)。これはコントラクトブリッジの場合、13枚手に持ち、クローズドポーカーの場合5枚手に持つ、ということで、ポーカーサイズの方が比較的横に大きくても枚数が少ないため、横長になっているようです。
また、箱の模様がポーカーサイズは変更がありましたが、ブリッジサイズは昔のままです。
また、ジョーカーも、ブリッジサイズは同じ模様のものが2つで、ポーカーサイズは現在、カラー入りジョーカーとモノクロのエキストラジョーカーとなっています。
昔はオハイオの工場で作られていましたが、現在はケンタッキーの工場製となり、若干腰が柔らかくなったとは言われています。
せっかくですので、古いカードの画像もアップしておきます。

写真1.左ブリッジサイズ、右ポーカーサイズ。真ん中の矢印の向きがブリッジとポーカーで異なります。


写真2.バーコード施行以前の箱を発見しました。


写真3.Hey Presto! 『トランプの賞味期限?』記事から算出すると、上の箱のエースに記載されていたYのマークは1972年製を意味するということらしいです。


写真4.今は無きトランプ類税証紙のついた箱(トランプ類税は1989年消費税導入により廃止)


なぜマジシャンがBicycleのポーカーサイズを使うのかというと、U.S.Playing社の回し者だから、というわけではなく、理由があります。
Bicycleを使うのは、何はともあれ、安価ということが挙げられます。日本でも最近ではダース買い(12個で1箱になっているもの)だと200円台で購入できたりします。また、滑りが良いこと。触ってみると分かりますが、Bicycleは非常に滑りが良く、リボンスプレッドと呼ばれるテーブルにカードを帯状に広げたり、手の間に扇状に広げたりするのに非常に適しています。
またポーカーサイズを使うのは、現在、特殊な仕掛けのあるトランプがほとんどポーカーサイズなので、マジックが上手くなった時にそういったカードを使うのに都合が良いからです。
正直言って横幅が見やすいからポーカーサイズが良い、とか言うのは個人的にどうなのか、と思っています。アメリカとか北欧とかの巨漢で手がグローブみたいな人は確かにポーカーサイズでないと子供用トランプみたいになってしまうでしょうが、手の小さい人が仕掛けカードを使いたい以外の理由でポーカーサイズを使わなくても良いでしょう。ヨーロッパではTommy WonderのDVDではピアトニックのブリッジサイズを使ったりしています。また、お金の問題気にしなければ、好きなカードを使えば良いとも思っています。最近では前田知洋のTV出演の影響か、タリホーのサークルバックを使う人も増えています。ですので、マジック界の常識は気にしないでおきましょう。

裏模様の色は汎用品では赤と青がありますが、マジックで使う場合、赤にしておいた方が良いとされています。 理由は手の中で特殊技法をするときに、赤い裏の方が目立たないからです。ただし、これも気持ちの問題ですので、別に青裏を普通に使っている人も多いし、好きにしたら良いです。この辺に書いている理由に納得すれば選べばよいし、納得しなければ自分の感性で選んで全然構いません。

トランプを買うと、反りが大きい時も良くあります。そういう場合には、カードガードと呼ばれる金属製のクリップで挟んでおけばある程度反りが解消します。

写真5.カードガードにカードの箱ごと挟んだところ

購入時に箱の上から反りを確認したり、箱を上下左右に振ると、反りの具合が少ないと比較的良く動きますので、そういったカードを買うようにしましょう。

私はあまりマニアックでないので、カードの基本的な部分はこれくらいにしておきます。
この他、ステージでミリオンカードやファンカードに使うマニピュレーション用のカードがありますが、これについては別の機会に言及したいと思います。

2015年2月14日土曜日

マジックの始め方(クロースアップ導入編)

マジックの世界は既に書いたかもしれませんが、ものすごい入口が分かりにくく、閉ざされた世界となっています。その入口をこじ開けていく方法を少しずつ記事にしていきます。

『マジックの趣味としての楽しみ方』シリーズに記載したように、手品・マジック好きとは言っても色々なタイプがあることをお示ししました。ここでは、取りあえず、一般的にマジックを始める=手品を人前でできるようになる、ということを目指すものとして記事を作成します。

手品を人前で見せるとは言っても、ステージ・サロン系のように大人数の前で見せる場合と、クロースアップマジックのように近くで少人数に見せるマジックがあります。通常、すぐに大人数に見せる事情がないのであれば、まずはクロースアップマジックから始めることをお勧めします。理由は
①比較的使用する道具が安価である。
②比較的入門から上級向けの内容の書籍までが揃っている。
③割とすぐに人に見せる環境が得やすい。
④動きや体の使い方などのようなマジック以外の要素にとらわれることなく、不思議さに重点を置いてマジックを見せることに集中できる。
⑤指導者がなくても独学で学びやすい。
⑥持ち運びが便利で、即時対応が可能。
⑦一人でも楽しめるし、愛好家も比較的多い。
⑧練習の成果が出やすい。
⑨人前で演技する恥ずかしさが比較的少なく取り組みやすい。

といったことが挙げられます。
異論はあると思いますが、やりたいマジックが決まっていない場合は、クロースアップマジックから始めましょう。

こうやって書いているお前はどうなんだ、と言われると、私の場合、クロースアップマジックから始め、サロン・ステージ系の方が現在メインになってきております。これは人によるとしか言えませんが、普通にマジックの出演依頼を募集すると、たいてい、サロン系のマジックの依頼しか来ないため、やむなく、サロン・ステージ系の比重が高くなっております。
マジックのサークル活動している所もどちらかというとステージ・サロン系のマジックを教えている所の方が多いようです。
 しかし、それでも、私はクロースアップからスタートする方が心理的・経済的負担も少なくて済むし、メリットがあると考えています。

2015年2月11日水曜日

マジックの趣味としての楽しみ方⑱(理論家)

⑰マジックの心理面や理論面に興味があり、研究に没頭している

ついに、というかやっとというか、『マジックの趣味としての楽しみ方』連載も最終回に来ました。
マジックというのは起る現象は非合理的なものが多いのですが、裏でやっている作業は合理的なことの塊ですので、理系の理屈っぽい方の趣味となっている場合が多いです。そして、妙に高学歴の方が多く、理論面の研究もマニアックな方が多いです。

色々な方がおられるのですが、例えば
虚構の理 とか 40才ぶねお君のマジックブログ人気ナンバーワン!
とか色々あります。また、理論ではないかもしれませんが、研究としては、フレンチドロップのサイトにマジック研究家の石田隆信氏のコラムマジックラビリンスといった、超専門的な本格的研究サイトなどが存在しています。
このあたりのサイトになると、私のようなにわかマジック愛好家からすると、よくこんなクレジット調べたな、とか、よくそんなマニアックなことを考えたり作ったりしたな、とかいうとんでもない次元の研究成果が公開されております。
こう考えると、マジックを演じなくても知的好奇心が色々満たされるような研究分野が広範囲に存在することが分かります。

しかし、過去のマジックを誰が考案したかを調べようと思っても、データベースがあるわけではないので、結局、オリジナルだ、と主張して、実は30年前に公開されていたマジックだった、とか、普通にあります。
そういう意味では是非、色々な分野で独自の研究を行い、マジック界に貢献していただけると、我々も助かります。


今回は『マジックの趣味としての楽しみ方』①~⑱を総括して述べますが、マジックは演じるだけ、見るだけの楽しみ方だけではなく、色々な楽しみ方があるので、他の楽しみ方を否定することなく、お互いを尊重して楽しんでいってもらいたいと本当に思います。
また、自分がマジックが好きだと思っても、本当はどの分野の内容が最も興味のあることかを理解した上で、マジックを生涯の趣味としていただければ幸いです。

以降の記事ではこれらの楽しみ方を考慮したうえで、さらに基礎的な知識を身に付けるための記事を作成していきたいと考えています。

2015年2月9日月曜日

マジックの趣味としての楽しみ方⑰(修行)

⑯マジックで生計を立てるために、修行を行っている

こういう人は既に趣味ではなく、生活の糧となりかかっている方です。
若い方には結構、マジックで生きていこう、と考えている方がいるようです。ありとあらゆる機会を利用して、マジックを演じる場を求め、少しでも、有名なマジシャンやプロデューサーに見いだされようと苦労しておられます。

これは歌手などと同じようにストリートでマジックをされる方や、マジックバーへ交通費だけや、無報酬で出演して経験を積むとか、コンテストに出まくって、プロマジシャンデビューの機会を伺っている方も多いでしょう。

これらの人から見れば、マジックの趣味としての楽しみ方シリーズで挙げたような楽しみ方など、何を生ぬるいことを言っているんだ、となり、相容れないことになるでしょう。
しかし、こういう努力をしていても、成功する方は一握りで、夢破れる方が多いです。何をしたり顔で言っているんだ、と思われるでしょうが、現実的に、マジックでどのように生計を立てていけるか考えてみましょう。

①TV出演:これはMr.マリック並の出演回数を誇れば何とか生計が立つでしょう。しかし大部分のマジシャンは TVを宣伝の場くらいに考え、使い捨て覚悟、種明かしややらせも辞さずで出演し、名前を売ってから、別の営業で稼ぐスタイルがほとんどです。TV出演など芸能事務所所属者並の仕事で生計は立ちません。
②プロマジシャンとしてステージなどで営業:いわゆる日本奇術連盟所属のプロの方やオーソドックスなプロマジシャンはこのスタイルで生計を立ててきました。クロースアップマジック専業でプロが出てきたのは日本ではごく最近のことです。何故プロマジシャンはステージマジックやサロンマジックをすることが多いかというと、単純に大人数を相手にするので、一人当たりから徴収する金額が少額で済むからです。(もちろん、お金を出して依頼してくるクライアントは圧倒的にステージ系の方が多いというのもあります)。
③バーマジシャン:これは自分で経営する場合と雇われの場合があります。マジックバーも実際、そんな新規なお客がいつも来るわけではないので、結局、普通の水商売と同じく、人柄やトーク力がマジックの技術より重視されますので、コミュ力に自信のない方には向きません。
④クロースアップでの営業:これもマジックバー等でバイトして、それ以外に自己の営業力で企業様のクロースアップマジックショーやテーブルホッピングで稼ぐ方法です。しかしクロースアップ専門と言っても、それだけでは食っていけないので、サロン等もやらないといけなくなってしまう例がほとんどです。
⑤マジック道具のクリエイター:ミカメクラフトとかクライスとか言うような、マジック道具を作っている会社があります。しかし、そうは言ってもそんな新規なものをしょっちゅう作れたりしませんし、市場も小さいため、苦労が多いようです。
⑥マジックショップやマジックディーラー:道具を作るのではなく道具を売るという職もあります。しかし最近はマジックショップも増加し、同じような品揃えになってきて、値段勝負的な部分も強くなり、経営環境は厳しくなっています。さらに、マジック道具の価格も一昔前から比べると相当安くなり、利益率は低下しているものと考えられます。
それにマジックマニア相手の商売なので、ちょっとでも変な物を売ると、今の時代すぐにTwitter等で拡散してしまうので、生きた心地がしません。ディーラーも昔はデパートにいっぱいあった手品用品売り場もどんどん無くなってきております。また歩合だったりするので、もう販売に必死です。

結論は、こういった修行している方は普通の趣味の方と違う覚悟が必要です。また、前途は正直多難ですが、自分の人生ですので、やりたいようにやってみましょう、という私の意見です。

2015年2月8日日曜日

マジックの趣味としての楽しみ方⑯(ボケ防止)

⑮ボケ防止のため手の運動の代わりにマジックをやっている

手品・マジックを趣味にしている、というと、必ず言われるのは『器用なんですね』というような内容です。
手品をされない方からすると、不思議な現象は、マジシャンの目にも留まらぬ早業で起こしていると思われているようです。確かに、スライハンドマジックと呼ばれる、テクニック重視のステージ系マジックや、クロースアップマジックでもノーギミックという、種仕掛けに頼らないタイプのマジックでは練習あるのみ、といった器用さの要求されるものも多く存在します。実際には、こういう器用さが無くてもほぼ道具が自動的に現象を起こしてくれるタイプの物も存在しますので、割と不器用な方でも手品・マジックを幅広く楽しんでいただくことができます。

ということで、ボケ防止と言っても、①直接手先の練習が必要なマジックに取り組む、②マジックをやることで若返りできる、の内容が考えられます。
①は導入部でも述べたようにステージマジックでは四つ玉やシンブル、リング、ミリオンカードといった、学生マジックで良く見られる演目を練習することが該当します。四つ玉はビリヤードボール状のものを指の間で増やしたり減らしたりするマジックで、角度に弱いため、ひたすら練習と、角度の研究が必要になります。 ミリオンカードという手からカードを次々に出していくマジックも種自体は至って単純ではありますが、これを上手く行うためには形になるまで数か月、まともにマジックとして演じようとすると数年単位かかってしまいます。これらは練習すればするほど上達しますので、指の運動にはもってこいです。確かにこれらのことを練習していれば、ボケている暇などありません。ただし、ボケ防止とはいえ、やはり上達が遅いとそのうち練習するのも嫌気がさしてしまいますので、そのうち練習をやめてしまい、目的を達成できなくなる可能性が高いです。
また、クロースアップマジックでカードのフラリッシュ【Dan & Daveとかその他色々】とかコインの超絶技巧的マジック【 例:SickというDVDみたいなのとかその他もろもろ】など、若い方がどういうわけか好みそうな内容の技術もありますが、こんなものを練習していると大抵、年配の方は最初の段階でついていけません。
この方法でのボケ防止は若い頃からテクニック系マジックをやっていた方には向く方法ですが、いきなり定年後に始めることはお勧めできません。
②について、これは実際に人前でマジックを演じることがボケ防止につながるということです。個人的な話ですが、マジックを数多く披露されている方々は比較的年齢以上に若く見える方が多いです。これは芸能人と同じで、人から見られるというのが仕事みたいな趣味の場合、見た目が大事ですので、必然的に姿勢も良くなり、下手な姿を見せたくないという意識が、見た目に気を使うというモチベーションにつながっていると考えられます。

ということで、結論は、ボケ防止でやるなら①手先の器用さの必要なマジックは程々のレベルにしておかないと、嫌気がさします、②人前の舞台に立つことで、若さが保てる可能性は十分あります、ということです。

是非、ボケ防止のためにマジックをやってみたい方は今からスタートしましょう(とマジックの宣伝です)。

2015年2月3日火曜日

マジックの趣味としての楽しみ方⑮(英語の勉強)

⑭(海外のDVDが多いため) 英語の勉強も兼ねてマジックもついでにやっている

英語が苦手と言われた日本人も現在では相当数英語圏へ駐在していたり、海外旅行へ長期連休中に行ったりする人も増加しております。
また、ネットの普及により英語のサイトで趣味の分野の検索をしたり、Skypeで外国の方と英語で話す、といった方も普通におられます。
そういった、英語も勉強したいが、趣味にもいっぱい時間を割きたいという人に、マジックはピッタリです。現在でこそ、スクリプトマヌーヴァという海外有名DVDや書籍を翻訳してくれる会社ができておりますが、圧倒的にマジックの世界では英語の文献、DVDが多いです。
その昔、高木重朗や松田道弘といった諸先輩方が自費で購入したマジック洋書を読みこなし、良いと思われるマジックを厳選し、日本語にしてくれておりました。おかげで、英語圏以外の国では比較的、自国語でマジックの書籍を多く読むことが出来ます。
 また先述したとおり、スクリプトマヌーヴァという会社は英語のDVDに字幕を付けるという、画期的なサービスを展開し、今や日本のマジック界になくてはならない存在となっております。
しかし、そうは言っても最新ネタやマニアックなネタについては翻訳が間に合わなかったり、翻訳されなかったりするため、日本語で限界を感じた場合、英語で直接文献に当たる必要が出てきます。
しかも、マジックの動画などは、英語があまりわからなくても現象や用語をある程度知っていれば、見ているうちに知っている所以外の内容も補えるようになり、大体内容が分かってくる、すなわち、英語も理解できてくるようになるという利点があります。

そして、今はやりのTEDというプレゼンテーション番組には、マジシャンも何名か出演しております。そして、TEDコンテンツは無料にも関わらず、日本語字幕、英語スクリプトを出せる、など至れり尽くせりな状態となっております。
参考にTEDコンテンツに登場したマジシャンを挙げると、

レナート・グリーン
捻りのきいたクロースアップ・カードマジック

マルコ・テンペスト
 サイバーカードマジック

アポロ・ロビンス
注意をそらすテクニック

 などが無料で楽しめます。
内容が自分の好きなマジックの分野ですので、英語の理解も進みますし、自分のマジックにも使えるネタだと、レパートリーを増やすのにも役立つ、という一石二鳥です。さらに、英語ができるということで、女の子にもひょっとしたら、尊敬の念を勝ち得てモテるようになるかも、という一石三鳥の効果があるかもしれません。また、学生の方の場合、マジックばっかりしていると、勉強しなさい、と言われるかもしれませんが、それに対し『英語のヒアリングの練習しています』と答えれば、ご両親も納得せざるを得ません。

結論として、マジックのDVDなどには字幕付きもいっぱいあるし、TED無料動画にも字幕付きがあるので、お金のあるなしに関係なく、英語も学べます。
マジックを趣味にしていると、英語も勉強でき、女の子にモテて、両親にも勉強しろとうるさく言われない、かも、という副次的効果が得られるかもしれません。
【ただし、女の子にモテるかどうかは保証の限りではありません】

2015年2月1日日曜日

マジックの趣味としての楽しみ方⑭(練習の鬼)

⑬高度な技法を一人で練習するのが好き

一般の方が手品・マジックを趣味にしているというと、まず思うことは、「手先器用なんですね」ということです。それだけ、マジックに対して、理解がなされていないことを意味します。
当然のことながら、手品・マジックにも種類が色々ありますので、数理的に勝手に現象が起こるものや、道具が全てやってくれるマジックも存在し、このような演目ではもはや手先の器用さなど関係なく、トーク力やダンス、演劇的素養が必要とされます。
これに対し、スライハンドやマニピュレーションと呼ばれる分野や、クロースアップマジックの分野にはとてつもなく手先の器用さ、というより、ひたすら反復練習しなければ現象を起こすことすらできないマジックや技法が存在しまします。これらは、練習して上達する過程が結構一人悦に入り、楽しかったりします。

例を挙げますと、ステージ、サロンマジックで、ミリオンカードと呼ばれる、空の手からトランプを大量に取り出すマジックがあります。1枚出すだけなら比較的簡単なのですが、これを綺麗に扇型に広げて次々と取り出すためには、指が痛くなるくらい数か月練習してやっと形になり、人前でそれなりのクオリティーで見せるためにはさらに数年必要とかになったりします。
また、四つ玉というビリヤードボールを指の間に出現させるマジックも学生などが良く演じておりますが、非常に角度に弱いため、技術的な練習を行うとともに、見えないようにするための研究なども必要で、非常に長期間の練習が必要です。しかも、滑りやすいため、練習ではパーフェクトだと思っても、本番では汗で滑って失敗するリスクも高く、四つ玉を演じている人は練習の鬼といっても良い人が多いです。

クロースアップマジックの分野でも、カードを使ったマジックの場合、フラリッシュという、大道芸的にシャッフルしたり、カットしたり(ようするに混ぜること)を格好よくする方法があります。これなどは練習しているかしていないかで綺麗さに差が出ますので、技法を一人で練習する人にとっては、恰好の練習材料となります。
また、マジックに使う技法としては、ネットを見てもわかるように、パスと呼ばれる、ひそかにカードを入れ替える(わざとぼやかした表現としています)技法があります。種類も色々あり、練習すればするほど素早く動作ができるようになるため、カード技法の上手さを評価するのには良い教材なので、マニアの方は練習しまくっています。普通のトランプの重さではスピードアップが図れないので、さらに重い鉄板をトランプ形状に切った板で負荷をかけて普段練習している方も大勢おられます。
カード以外でもマッスルパスという、手の平からもう一方の手へ、動かさずにコインを飛ばしてしまうという技法があります。これなども、30㎝下から上に飛ばしたとか、練習していくにつれ、手の平も堅くなり飛距離が伸びるます。これは比較的若い年齢層(小中高生)などにとって格好いいと映るようで、 そういった方たちやマニアの方々が熱心に練習されております。マッスルパスの飛距離を競う大会まで存在しており、高度な技法を極めたい人のためにはうってつけです。
こうなると、もはや人を楽しませるとかそんなことはどうでも良くなります。

ウィザード・インと呼ばれる団体には、こういった技法重視をしたマジシャンが多く所属しております。この団体は渋谷系と呼ばれ、月刊少年ガンガンに『マジック・マスター』という漫画を連載したり、ウィザードインデックという子供をターゲットにした滑りの悪いトランプを売り出したりしており、小中学生などに影響を与えていたようです。
TVで有名技法、有名マジックを種明かししてしまった関係で、マジシャン関係者から色々苦情を言われていた団体ではありますが、基本的にはギミックを使わずに、普通の道具で全てやってしまえ、という雰囲気のマジックを見せてしまいます。そのためピュアリスト向きの、世間一般の人が器用なマジシャン、と思っているのに近いスタイルが好きな人はこの団体の書籍や会に参加すればいいでしょう。色々な評判はありますが、私は何が正しいのか答える判断材料を持っておりません。ということネット上で情報検索するなり、人に聞くなりして、自己判断の上、参加するなりなんなりしてください。私は何があっても責任は取りません。
ただ、ウィザード・イン関係の緒川集人がステージでもクロースアップでもすごいテクニックの持ち主であることは間違いないです。練習大好きの人には高い山のような存在でしょう。しかし、日本では全く受けず、アメリカでは受けが良いようです。プロの方に関してその理由を書くのはおこがましいですが、TVや動画で見たところ、日本での受けが悪いのは、①喋りが早口すぎ、②テクニックがあるのは良くわかるが、逆に嫌味に感じられてしまう、のせいではないかと思われます。いや、確かにすごいのですが、自分でアピールしなくてもいいんではないか、と思います。
アメリカで受けている理由は①喋りが英語のため、日本語に比較してどうしてもゆっくり目になる。よって、英語だと、比較的ちょうど良いスピードになっているのではないでしょうか。②しゃべている英語がノンネイティブのため、ネイティブ的にはコメディータッチのように聞こえる【例えて言えば、ゼンジー北京が『私、中国は広島の出身あるよ』のような訛りのある感じに聞こえるのに、凄腕のマジックをしているギャップが面白いのではないでしょうか。マギー司郎がミリオンカードをドヤ顔して真剣に演じている感じ、と言えば分かるでしょう】。
日本では謙虚さが求められるが、アメリカでは自己アピールを積極的に要求されるという、文化の差が人気の差にもあるのではと個人的に思います。


ちょっと脱線しましたが、結論として、 ステージでもクロースアップでも高度な技法は存在するので、一人で十分楽しんでも楽しいです。ただし、他人が見て楽しいのかどうかは全く相関がありません。
技法関係の達人の多い団体にはウィザード・インがありますが、ご加入は自己判断で決めて下さい。