2016年9月23日金曜日

『カズ・カタヤマのステージ・サロンマジック入門講座』(第11巻) 大人数にマジックを見せる難しさ①(資料が少ないこと)DVD

『カズ・カタヤマのステージ・サロンマジック入門講座』(第11巻)は本格スライハンド四つ玉編です。

四つ玉と言えば、19世紀末にフランスのボーディエ・ド・コルタというマジシャンが発明したジャンルですが、現在ではシェルと呼ばれるギミックを利用して様々な技法や演出方法が開発されてきました。様々な手先の使い方、角度の使い方、表現方法が学べるマジックのため、かつてはマジック入門用として四つ玉が用いられたりしました。

日本の大学生による、いわゆる学生マジックというステージマジックの分野では今でも見かけますが、その他アマチュア、プロマジシャンで演技する人は少なくなりました。理由は難易度が高く、練習量が膨大に必要なこともありますが、どちらかというと、角度の制約が大きく、演技場所の制約が大きいことが挙げられます。
難易度に関していえば、昔の木製の滑りやすいボールから、現在ではシリコン製の滑りにくい素材の物も開発されており、取り扱いやすくなっております。

本DVDでは四つ玉の基礎から学べるよう、基本技法から基本手順、応用手順、ケーンを用いた発展手順というように、カズ・カタヤマ氏が組んだルーチンが説明されています。メインは3ボール1シェルの内容となっています。ダブルシェルやトリプルシェルといった発展技法については説明されておりませんので、他の資料に当たる必要がありますが、実際にアマチュアが実演する場合は本内容をマスターすれば、十分本格的マジシャンとみなされるでしょう。

ステップ1 基本編
・基礎知識
四つ玉の色やサイズについて等、基本的な知識の説明をしています。 
・基本技法のおさらい
第4巻(パーム)、第7巻(フェイクパス)というのが説明されていましたが、ボールに関してそれらの技法のおさらいをします。
・シェルとその扱い方
四つ玉マジックの基本ギミックであるシェルを自然に見えるようにできる扱い方について説明しています。
・シェルによるボールの増減
シェルを利用してボールを1個から2個へ増やしたり2個のボールを1個に減らしたりする技法の説明です。
・シェルへのロードとスチール
 シェルにボールを送り込むための説明です。これができると、一つのボールが最終的に4つに増える四つ玉の基本手順となります。現象を起こす時も一方向だけでなく、正面でも行うようすると、演技に変化が出ます。
・見せ方と立ち方
四つ玉はボールを横に持ちますが、立つときは正面を向くようにする必要があります。
・(手順1)四つ玉基本手順
一つのボールが二つに増えます。体や手、肘を貫通しながらボールが移動しますが、ボールが二個、三個、最終的には四個に増える手順です。入門者向きの練習手順です。
・テーブルを使わない方法
テーブルを用いず、ポケットにボールを入れておいて行う方法の説明です。基本的流れは(手順1)と同じです。
・減少していくボール
片手に四つ持ったボールが一個ずつ消えていき、最後にはボールが無くなる手順です。(手順1)とは逆の現象です。
・シルクになるエンディング
四つ玉の移動現象を行い、最後に移動したあと、ボールがシルクに変化しています。

ステップ2 応用編
・シェルのあらため
シェルを使ってボールを2個に増やし、裏面も改める技法です。ボールを落としやすいため、結構練習が必要です 
・ (手順2)四つ玉応用手順
シェルのあらためを用いた四つ玉の応用手順となっています。3ボール1シェルの手順ですが、1個のボールが4個まで増え、そのボールがまた1個に減り、最後は一気に4個のボールになります。
第1段から第3段にて構成されていますが、基本手順と比べて、難易度激ムズです。この応用手順ができれば、裏表改めや一気に4個に増やしたりできるため、マニアでも不思議な感じがするでしょう。もはや入門講座とは言えない動きとなっています。
おそらく、全12巻のマジックの中で最も難しく、練習が必要だと思われます。

ステップ3 発展編
・(手順3)ケーンとボールの手順
ケーン(マジシャンのよく使うステッキ)が白と黒のハンカチに変わり、白いハンカチからボールが出てきます。シルクの後ろからボールが次々出てきます。四個のボールが一個になり、再び瞬時に四個に戻ります。ボールを捨てて最後の一個がシルクのハンカチになり、それが最終的にケーンになって終わります。
ケーンとシルクを用いることにより、四つ玉だけの単調さを補い、十分プロマジシャンのトリにも使える手順となっています。実際にカズ・カタヤマ氏が舞台で演じている内容を踏まえて再構築されているようです。
・バニシングケーンの扱い方/・アピアリングケーンの扱い方/ケーンの回し方
バニシングケーン、アピアリングケーンのセッティングについて説明されています。 意外と道具は持っていても、きちんとした説明は少ないため、貴重な映像資料となっています。また、ケーンをきれいに回転させる方法が説明されています。


“ステージマジック基礎講座⑪”はマジックショーにおける手順の構成となっています。初心者の場合はあまり長い時間マジックを行うのは好ましくないですが、実際にマジックショーの依頼を受けて行う場合、10分や20分演じる必要が出てくるため、複数のマジックを組み合わせてショーを構成することになります。
ただ、上手くなっても、適当にできるマジックを連続して行えばいいというものではありません。日本でマジックショーを行う場合、起承転結を考えて、オープニングは分かりやすい物を選びます。最初のマジックでマジックショーの命運が決まりますので重要となります。次にそのマジックの流れに乗ってマジックを行います。慣れてきたら、トークマジック等で変化させて、飽きさせないようします。最後にトリネタとなり、全体を締めくくる派手な物やボリュームのあるマジックを行います。マジシャンを象徴するような盛り上げるマジックを選びます。
今までに習ってきたマジックを具体例に挙げ、構成について説明されています。
BGMを掛けて行うマジックは15分程度が限界であり、それより長くなると、トークマジックを行っていく必要が出てきます。しかし、不思議だけでなく、お客さんが興味を引きつけられる内容にしないといけないですが、この辺はマニュアル的に決まったものはなく、マジシャンそれぞれ実演を経て、経験を積んでいき、自分なりのマジックショーを構成していかないといけないでしょう。


本シリーズも後半になるとだんだん難易度が上がって来ますが、人前で見せるマジックを習う上では役立つ情報が満載だと思います。
 

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