マジックの物理的な動きが手順を意識せずにもできるようなレベルまで習得できたら、セリフを身に付けていく必要があります。
図解マジックテクニック入門:カズカタヤマ著、東京堂、2003 には『マジックは魔法の再現に他ならない』 (p.8)とあり、魔法の再現の要素としてセリフが利用されることとなります。
本記事を書こうとするため、各種書籍を改めて読み直していますが、マジシャンがどういうスタイルの魔法を扱うか、どういうキャラクター性を与えたいか、どういう年齢層や客層を対象にしているかによって、一概にどうすべきか、と単純に決められないため、まず、一般論的なセリフの考え方を説明することとします。
例えば、前田知洋演技で有名となったお客さんのサインしたトランプ が何回真ん中に入れても一番上に上がってくる、アンビシャスカードについて考えます。
①手順の実況中継するセリフ
初心者が自分でセリフを考えなければならない場合で、一番単純な方法です。
『トランプ選んでください』
『選んだトランプの表側にサインしてください』
『ではこのサインしたトランプをカードの真ん中に入れます』
『指を鳴らします』
『一番上のトランプをめくると、選んだトランプが上に来ています』
起こった現象や指示事項をありのまま素直に話すだけですので、比較的簡単に台本が作れます。ただし、基本的にマジック教室などに行くと、こういう実況中継は見ればわかることを口に出さなくてもよい、とダメ出しされます。それでも、何も喋れないよりはましなので、まず最初は実況中継でもいいので、動作とセリフを同時にリンクさせることができる練習をしたらいいと思います。慣れてきてから難しいセリフに挑戦すればいいのです。
②TVや書籍でマジシャンが使っていたセリフ
これは参考となるセリフが既にあるものをマネする方法です。
『好きなトランプをおっしゃってください』→客『ハートの8』
『良いカードです』→客『どうしていいカードなの?』
『ハートは愛情を表し、八は末広がりで演技が良いからです』
『では、選んだトランプにサインしてください』
『今までにハートの8にサインしたことありますか? ないですね。ということはこのハートの8は世界に一枚だけのカードということになります』
『このカードを真ん中に入れます』
『指を鳴らすと、あなたのカードは一番上に上がってきます。これはあなたがお仕事の世界でもトップに上がって来れる方だということです』
あなたが前田氏のようにスタイリッシュでこういった歯の浮くようなセリフが似合う方ならいいでしょうが、Youtube動画に出てくるような小学生や中学生たちがこのセリフでアンビシャスカードを演じていたら、間違いなく、いけ好かない変な奴扱いされるでしょう。
③自分の身の丈にあったセリフ
これが一番いいのですが、実際演じる方が普段どのようなキャラクターなのか、誰に演じるのかにより変わってきますので、例を挙げるのは難しいです。身近な方に演じる場合は、少なくとも、普段べらんめー調の方が丁寧な敬語で話していては違和感があるでしょう。また、とてもモテそうにないキャラの人が愛情とか末広がりとか言っていては気持ち悪さがさらに倍増することでしょう。
知らない方に演じるという、セミプロのような立場ならマジック用上品キャラを演じて②の物マネスタイルも何とか許容範囲かもしれませんが、自分らしさというものを追及してセリフを考えましょう。
一例として、若い女性が占いっぽく演じる場合の案を示します。
『ちょっと最近心理テストに凝ってるんです。頭にパッと浮かんだトランプ言ってください』→客『ハートの8』
『かわいらしい、しっかりした人がタイプなんですね』→客『なんで?』
『ハートっていうのは女の子らしさを求めるシンボルで、8っていうのはマークがいっぱいあって、白いところが少ないでしょう。これは肌の露出の少ないしっかりした女の子が良いということなんですよ』
『じゃあその好きなタイプの人に言ってあげたい言葉書いてみて』
『これでこの子が世界で一番大切な人ですね』
『じゃあこの子を世間の荒波の真ん中に入れます』
『でも、指を鳴らすと、やっぱりあなたに会いに一番上に戻ってきます』
※スペードとかの黒いカード選ばれたら『姉御肌の人がタイプなんですね』
絵札選ばれたら『派手に着飾ったタイプが好きなんですね』
とかこじつけします。
まあ例なんで、適当に作ってみましたが、興味のある分野にかこつけて、セリフを作ってみればいいと思います。上記のように寒いセリフになっても保証はしませんが。
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